Y-164 GREY

世界中の恋がくゆらす煙…グレイ
ゆっくり空に昇っていって
燃え尽きた日々
思い起こすように漂う美しい色
私の心はアッシュトレイ
灰を落とす彼のくせと
指先なつかしむ 小さな大理石
松任谷由実「GREY」
オリジナルアルバム『宇宙図書館』より

元々は、小林麻美に提供した曲。
1987年に小林麻美のオリジナルアルバム『Grey』をユーミンがプロデュースしているのですが、その中のラストチューンがこの曲。
ぼくはそのアルバムを聞いた時からこの曲が好きで好きでたまらなかったんです。
だから、この曲が収録されている『宇宙図書館』の発売前に収録曲が発表され、その中に「GREY」が入っているのを知った時、「え?何?ひょっとして小林麻美にあげたあの曲?それとも同名異曲?」と頭の中混乱しました。
そして、アルバムをフラゲしてアルバムを通して聞いて、ラストにこの曲が流れてきたとき、本気で泣きました。
当然のことですが、小林麻美のバージョンよりもはるかに重厚で、ゴシックな雰囲気で、『宇宙図書館』というアルバムのラストを飾るのにぴったりだと思いました。
そして、このアルバムはぼくにとって特別なアルバム。
ちょうどこのアルバムが発売された直後、父が亡くなったのです。
その後の『宇宙図書館』のツアーはぼくにとってはレクイエム的なツアーになり、この曲を聴くたびに父のことを思い出し、泣いてばかりいました。
この曲の歌詞の中でもっとも好きな場所は

世界中の恋がくゆらす煙…グレイ
ゆっくり空に昇っていって
燃え尽きた日々
思い起こすように漂う美しい色

ぼくは煙草を吸う人間なので、この「世界中の恋がくゆらす煙」というのが実感としてすごくわかるの。そして、その煙がまるで燃え尽きた日々へのご焼香の煙のように描いているところもまたこの曲の魅力なんだと思うのです。
ぼくはこのツアーの時、ゲネプロに当選し、初日のチケットも持っていたので、横須賀のホテルに泊まりました。
その時、暮れて行く下界を見下ろしながら、この曲をずっと聞いていました。
ちょうどこの曲のような雨模様だった気がします。
まさにGREYの世界。
父はその昔ヘビースモーカーだったので、そんなことも思い出しながら、この曲を聴いていました。

そして、もう一つぼくが注目したのが

指先なつかしむ 小さな大理石

という箇所。
これは彼が灰を落とす指先を懐かしんでいる小さな大理石のアッシュトレイという意味だと思うのですが、それは今でも心の中にあって、彼のことを懐かしんでいる。
何度聞いても、ぼくはこの曲を聞くたびに、今でもこの曲の世界に引き込まれてしまうのです。
本当に名曲だと思う。

<用紙&インク>
KEN'S NIGHT 五線譜箋<雨景摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Bonus Track Don't Rain on My Parade