Y-93 経る時

四月ごとに同じ席は
薄紅の砂時計の底になる
空から降る時が見える
さびれたこのホテルから
松任谷由実「経る時」
オリジナルアルバム『REINCARNATION』より

桜の時期に聞きたい曲といえば、この曲も忘れてはいけません。
そして、この曲も「花紀行」と同様、ご当地ソングです。
場所は東京の千鳥ヶ淵
かつて、千鳥ヶ淵にフェアモントホテルというホテルがありました。そこのティールームが舞台になっているのだとか。
ぼくは、数年間、その近くのマンションに住んでいたことがあり、四月になると両親や友人たちと連れ立って、千鳥ヶ淵を散歩していました。
まだ朝早い時間。始発も走っていない時間帯に千鳥ヶ淵を散歩すると、本当にひっそりとしていて、満開の桜を独り占めできたんです。
フェアモントホテルは今はもう違う施設(多分介護施設?)になってしまい、面影もなくなったのですが、今でもあの近辺を歩くと、この曲を聴きながら、このあたりを散歩した時のことを思い出します。
歌詞の中で

四月ごとに同じ席は
薄紅の砂時計の底になる

というフレーズが出てきますが、この意味、わかりますか?
満開の桜の見える窓のあるティールームのことをそうやって表現しているんですよね。

ところで、この曲にはいくつかのエピソードがあります。

毎週土曜日に生放送していたオールナイトニッポンユーミンが話していたのですが、ある時、ジュディ・オングとこのホテルのティールームでお茶を飲むことになった時のこと。少し早めに着いたユーミンはロビーのソファに座って外を見ながら待っていたら、一台の大きな外車が車寄せに近づいてきたのですが、運転席に人が乗っていなくてびっくりしていたら、もこもこの毛皮を着たジュディオングが降りてきて、運転していた彼女がまったくユーミンの場所からは見えなかったんだと大笑いをしながら話していたのを良く覚えています。

この曲は時々、ツアーや苗場のアンコールで歌ってくれるのですが、苗場では歌詞の一部が変更されます。
「さびれたこのホテル」の部分を「いつものこのホテル」と替えて歌っているんです。
さすがに苗場プリンスに配慮してのことなんだと思いますが。

でも、2012年のロードショーツアーで、一回だけこの曲を歌ってくれたんですよ。ちょうど4月だったのかな?宇都宮の公演だったのですが、その時はちゃんと「さびれたホテル」と歌ってくれて、なんかすごく切ない気持になったのでした。

とにかく、この曲はいろんな経験を経た老夫婦の姿を歌っていて、それもまたぼくの心をキュッとさせるんですよね。

コンパートメントというユーミンのPVでもこの曲のPVがあり、それもとても良くできています。

<用紙&インク>    
KEN'S NIGHT 五線譜箋<夜桜摩天楼>    
KEN'S NIGHT 2nd Track 8 When I Fall in Love