Y-53 何もなかったように

人は失くしたものを
胸に美しく刻めるから
いつも いつも
何もなかったように 明日をむかえる
荒井由実「何もなかったように」
オリジナルアルバム『14番目の月』より

ユーミンはデビュー当時から「死」を題材にした歌をいくつか作っている。
死んだ人へのレクイエム的な「ひこうき雲」を始めとして、曲のどこかに死を思わせるフレーズがしばしば出てきて、ドキッとさせられる。
この「何もなかったように」は年老いた愛犬がなくなったことが歌われる。
それでも、日々は淡々と続いていくものなんである。
それをこの作品では静かに歌っている。
そして、この年老いたシェパードの死はある意味、メタファー的な役割を果たしているのではないだろうか。
ユーミンがこの曲でいいたかったのは、「人は失くしたものを胸に美しく刻めるから」こそ、「何もなかったように明日を迎える」のである。
6年前に父が亡くなった時、大きな喪失感に襲われたけれども、ぼくは何もなかったように明日を迎えることができたのも、この曲が深く胸に刻まれていたからなのかもしれない。

<用紙&インク>    
KEN'S NIGHT 五線譜箋<雪原冬休暇>    
KEN'S NIGHT 2nd Track2 Summertime