Y-31 ひこうき雲

高いあの窓で あの子は死ぬ前も
空を見ていたの 今はわからない
ほかの人には わからない
あまりにも若すぎたと ただ思うだけ
けれど しあわせ

荒井由実ひこうき雲
荒井由実ひこうき雲』より

1月のラストを締めくくる曲として選んだのは、デビューアルバムのオープニングにして、名曲とも言われている曲です。
この曲は実話に基づいていて、「ひこうき雲」の歌詞が書かれた直筆の原稿には(友だちが天国へ行った朝に)というメモ書きが残されているのを今開催中のユーミン展で確認しました。
この曲はジブリの映画でも主題歌として使われ、若い世代の人たちはそれで知っているという人も多いでしょう。
ユーミンのすごいところは、50年前に書かれた曲であっても、色褪せないところだと思うのですが、この曲もまさにそんな曲だと思います。
この曲の歌詞にも表れていますが、ユーミンの歌詞は良く読むと「死」をテーマにしたものが実に多いです。
これは哲学的な話でもあるのですが、人間は「なぜ生きているのか、そしてなぜ死ぬのか」という根本的な問題を抱えています。ユーミンは自分なりにその問題をポップスとして昇華しているのではないでしょうか。この曲はまさにそんなユーミン哲学の原点と言っても良いかと思います。
ところで、最近ユーミンはツアーでこの曲を良く歌っています。
宇宙図書館、タイムマシンツアー、そして最新の深海の街ツアーでも演出を変えながら歌っています。
何度も聞いているので「また~?他の曲が聞きたいのに…」という不満の声もちらほら聞かれますが、ぼくはこれはユーミンがこの曲を何度も歌うことでさらにこの曲をブラッシュアップさせてスタンダード(もう十分にスタンダードだと思うのですが)化させたいからなんじゃないかと思っています。
例えば、ベテランの噺家さんは、自分の十八番と呼ばれる噺を何度も何度も高座で披露する傾向があるのですが、それはなぜかというと、もっともっとブラッシュアップしたいからなんだと聞いたことがあります。
だから、ぼくもこの曲をツアーで聞く時は襟を正して聞くようにしています。
もし、今年開催されるツアーで歌ってくれたら、きっと同じ気持で拝聴することになるでしょう。そういうことができるというのもユーミンならでは、なんじゃないかと思っています。

<用紙&インク>
KEN'S NIGHT 五線譜箋<山荘冬休暇>
KEN'S NIGHT 2nd Track 6 Autumn Leaves