Y-199 人魚になりたい

踊りましょう きかないわ
あなたの愛はどこへ旅立つのか
涙つたうのを 肩ごしの鏡だけが知ってる
素直に泣ける雨の中で
冷たいフィズの泡の中で
人魚になってしまいたい
もう二度と 踊れない
松任谷由実「人魚になりたい」
オリジナルアルバム『SURF & SNOW』より

ユーミンの曲の魅力は耳にすんなりとなじむメロディだけではなく、歌詞の奥深さにもあると思う。
この曲は恋人と別れることになった主人公が最後のダンスを一緒に踊るというシチュエーションなのだが、

涙つたうのを 肩ごしの鏡だけが知ってる

というたった一行の歌詞だけで、その状況を脳裏にまるで映画のワンシーンのように浮かべさせるところがすごいなと思った。
チークダンスを踊っている時、お互いに抱き合うわけだから、相手の表情を見ることはできない。だから、主人公の前にある鏡だけが、その主人公が泣いていることを知ることになる。それをこういうさりげない歌詞に織り込んでくるところにぼくはゾクゾクしてしまうのだ。
切ない歌なのに、美しいメロディと歌詞で歌い上げるところがまた良くて、大好きな曲だ。


<用紙&インク>
KEN'S NIGHT 五線譜箋<雨景摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 4 I Left My Heart in San Francisco