Y-192 BABYLON

暁は煙り ビルはゆらめき
消えてゆくライトに 空は紫
はしゃいで帰れば 通りは響き
今日も動きだすバビロン
松任谷由実「BABYLON」
オリジナルアルバム『DA・DI・DA』より

30年前、ぼくが新宿二丁目に出始めた時、ゲイの中にはユーミンファンが意外にも多いことが判明してびっくりしたことがあります。
そんなユーミンファンと仲良くなるにつれ、一緒にユーミンのコンサートに行ったり、二丁目のカラオケのお店でユーミンの曲を歌ったりして親交を深めて行きました。
ある時、二丁目のお店で明け方まで一緒に騒いだ帰り道のこと。まだ何となく余韻に浸りたいと思ったぼくたちは、なんのきっかけだか忘れちゃいましたが、新宿西口の高層ビル群まで歩いて行きました。
ちょうど夏の熱い時期で、朝から少しムシムシするような日でした。
しんと静まり返った西新宿の街は、高層ビルの上の方が少しもやっていて、何とも言えない雰囲気に包まれていました。
その時、地方から来た友だちが「ユーミンのBABYLONって、ぼくにとってはこういう風景なんだよ」と言ったのです。
東京生まれ、東京育ちのぼくにとって、彼のその視点はとても斬新で、でも、すごく理解できたのです。
曲の内容も、地方から出て来たであろう主人公が煙っている高層ビル群を見ながら歌っているというシチュエーションなので、なるほど、地方から出て来た子たちはこういう気持ちでこの風景を見ているんだ!と感動したのでした。
それ以来、ぼくにとって、この曲はそんな友だちの言葉とともに思い出す曲となったのです。
きっとその友だちは今頃天国でぼくたちを見下ろしながら、この曲を聴いているかもしれません。
『宇宙図書館』のツアーでこの曲を歌ってくれた時、あまりの荘厳さに涙が止まりませんでした。
<用紙&インク>
KEN'S NIGHT 五線譜箋<夜景摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track The First Time Ever I Saw Your Face